■子会社社員に原発再開賛成メール促す 九電、番組向け(asahi.com 7/6)
http://www.asahi.com/national/update/0706/SEB201107060033.html
※リンク切れはご容赦願います。
ある日会社から、とある番組の案内と、原発再開賛成の「個人の」立場でメールを送ってほしい、とのお願いがあったとします。
・常日頃原発再開すべきと考えていたあなたは、ここぞとばかりに賛成の意見を番組に送りました。
・常日頃再開は再考すべきと考えていたあなたは、ここぞとばかりに反対の意見を番組に送りました。
・特に意見のないあなたは、何もしませんでした。
あなたはどれ?という話ではありません。会社の上司の目の前でやるのでもない限り、どれもいるのではないか、という話です。
今回の九州電力の「やらせメール」騒動で、個人的に気になってしまったことが二つあります。
一つは、どこが「やらせ」になるのか、という点。
会社の監視下にある状態で(イベントなど物理的に場を同じくするといった場合)、会社の思惑にそって、本人が望んでもいない行動をする社員がいれば、それは「やらせ」でしょうが、今回はそうではありません。
「会社がそのような依頼をしたことが問題」なのでしょうか。
では、反対派の市民団体が、支持会員に向けて同じようなことをしていた場合もやはり「やらせ」になるのでしょうか。知り合いに頼まれて何かの運動に署名した場合、それは「やらせ」になるのでしょうか。
どうもそのあたりの線引きが分からない、というのが一つ。
もう一つは、仮に番組に賛成意見が「多数」寄せられたとして、それが何になるのか、という点。意思決定の判断材料にするにはあまりにあいまいですし、そもそも番組で紹介されるにあたってすでにフィルターがかかってしまっているのです。
ツイッターのタイムラインをリアルタイムで表示するといった、番組側のコントロールが効かない形での開示でない限り、それが「寄せられた生の意見」とは言えないはずです。
そういった意味では、「寄せられた意見を紹介する」というスタイルで何らかの空気を作ろうとした「今回の番組」自体は「やらせ」と言えるかもしれません。が、そこに寄せられる意見は、それが何であれ意見の一つに過ぎないのではないか、という気がするのです。
いずれにせよ、今回の「やらせ」メール騒動により、九州電力とその子会社には、「原発賛成を会社に強制される社員」はいるけれども、「自らの考えで原発に賛成する社員」はいない、という空気が作られてしまいました。
原発に反対する側としては、これほど有利な状況はない訳で、指示を出したという責任者が、果たしてどちらのスタンスだったのか、聞いてみたい気がします。