排出量取引制度、方式は首相裁定へ 温暖化対策基本法案

asahi.com 3/9)

http://www.asahi.com/politics/update/0309/TKY201003090466.html
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今日12日には閣議決定される予定の温暖化対策基本法案ですが、その柱の一つである排出量取引について、省庁間で意見が分かれている、という記事がありました。

問題の焦点となっているのは、排出量を「総量」で規制するか「原単位」かという問題。
中国が原単位での削減目標を掲げたのは記憶に新しいところですが、世界的な趨勢は総量での規制に傾きつつあります。一方で産業界としては、せめて総量ではなく、生産量当たりの原単位の規制を求めるというのが、正直な国内事情。

そんなわけで、

環境省・・・総量方式
経済産業省・・・原単位方式

という対立があるのですが、記事では環境省が「総量方式のほか、原単位の方法も検討を行う」と折衷案を提示したのに対し、経済産業省は「総量方式、原単位方式、その他の方法の検討を行う」という表現を求めています。

環境省は、もちろん総量方式にしたいが、その結果産業界にそっぽを向かれては困るので「原単位方式も検討」。
経済産業省は、環境問題は分かるけれども、その結果産業が弱体化しては困るということで、出来る限り「原単位方式で」。

そうした思惑が垣間見える主張ですが、その記事で気になるのが、もう一つ口を挟んでいる省があること。それが外務省で、こちらは環境省よりも大胆に「総量方式を基本とする」という修正案を主張しています。

この思惑はどのように捉えたら良いでしょうか。

外務省の思惑は「国際交渉の場でイニシアチブを取れるカードにする」こと。その際に「原単位も」といった中途半端なカードでは足元を見られてしまい、交渉もへったくれもなくなってしまうため、「総量方式を基本」としたいわけです。

たまたま先日外務副大臣福山哲郎氏の話を聞く機会があったのですが、環境問題はすでに「環境を守る」といったいわば「奇麗事」の世界ではなく、21世紀の覇権を握る、少なくとも国際社会でイニシアチブをとっていくためのパワーゲームとなっているという話がありました。

そこで大切となってくるのが、「ルールに沿って競争する」のではなく、「自らがルールメーカーになる」ということ。排出量取引は欧州が先陣をきった「ルール」ですが、外務省としてはできればそれを上回る形のルールメーカーとなるか、せめて同列として対等に渡り合っていきたいという思惑があるのでしょう。

さて、閣議決定ではどうやら「総量方式を基本」として「原単位の制度も今後検討する」となるようですが、外務省としてはそのカードで国際交渉をわたりきっていけるでしょうか・・・。